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僕を日本に連れてって!―20年前(1996)のイラン―

time 2016/06/01

僕を日本に連れてって!―20年前(1996)のイラン―

photo credit: Amir Chakhmaq Complex via photopin (license)

イランでは「日本に行きたい」と相談されることがままありました。
当時はイラン人のビザの情報など持っていませんでしたが、「おそらく日本のビザの取得はかなり難しいだろう」と憶測で答えていました。

たいていのイラン人の方についてはこの返答で「そうですよね」と引き下がりました。
でも1人だけ、どこまでも付いてこようとする青年がいました。

彼は私に、表紙に惑星の写真が載った科学雑誌を見せ、「宇宙の広さに興味がある」というようなことを言い、「この狭い世界から出て行きたい」というようなことを話しました。
とはいっても、実際はどんなことを話していたのか、細かいことは分かりません。
私はイランの言葉はちょっとしたあいさつ程度しか分からないし、相手の英語はとても分かりづらいものだったから。

きっかけはヤズドのバス停でシラーズ行きのバスのチケットを探していたとき。
バス会社の窓口はたくさんあるのに、肝心のシラーズ行きが見つからない。
その辺のイラン人に聞いてもはっきりせず困っていた時に、一緒に探してくれたのがこの青年でした。

バス停からそのまま観光に連れまわしてくれて、働いているというお菓子屋でご馳走になり、建設中のモスクの塔に登らせてもらったりしました。
イランのモスクは、礼拝堂の横の塔が空に突き出たように高いので、その上から眺める景色は絶景。
おそらく町の中で一番高い建物がモスクの塔、という町も多いのではないかと思います。

その青年。
翌日、大きな荷物を抱えて現れました。
なんと、私と同じバスで旅に出る、というのです。
その時はたまたま日本人の青年と一緒に居たこともあり、怖いこともないか、と特に拒否もせずそのままにしておきました。

結局、言葉がつたない私たちに代わってホテルはその青年が交渉。
レストラン、観光地、といろいろと世話をやいてくれましたが、こうなるともう自由に身動きがとれず。
泊まりたいホテルに泊まれず、食べたいものは食べれず、行きたい観光地には行けず、状態。
さらに持ち物に興味を示すと、売ってくれ、貸してくれと、しつこい。
「お願いだからもう別行動にしてくれないか」と言い放つことになりました。

それにしても、どうしてそこまで。
そう思って、色々と話をきいてみると。

半年後に結婚することになっているんだ、と青年は話し始めました。
それも両親が決めた15歳の少女と。
それが嫌なのだ、と。

好きでもない人と結婚し、自由が奪われる。
きっとその焦りで、どうにかしたいと思っていたのでしょう。

すべてのイラン人がそうなら諦めもつくのでしょうが、実際はちがう。
自由に恋愛して結婚している人もいるし、海外に出て成功する人だっている。
そんな中で、自分が理不尽に自国に縛り付けられるのが耐えられない様子でした。
女である私からしたら、その15歳の少女も切ない。
なぜなら実際のところ、その青年は男性として魅力的とは言えないタイプだったから。

こういう時、生まれの不公平さにどうしようもない気分になります。
私はたまたま日本で生まれた。
しかも日本が戦争をしていない時代に。
さらには五体満足な体で。
たいした苦労もしていなければ、たいした努力もしていない。
それでも食うに困らないし、世界を放浪する自由だってある。

世界は絶対的に不公平なんです。
とっても当たり前のことですが。
でも、日本にいるとついつい忘れてしまう。
ほんの少しの不公平に、自分が不幸である気がしてしまう。

自分の傲慢さに何度も、申し訳ない気持ちになった。
当時のことを書きながら、その気持ちをまた思い出しています。
そしてこらからも、世界のニュースに触れるたびに、思い出すことになるのでしょう。

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プロフィール

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1歳、7歳、10歳の育児台風スパイラル。 教育資金のための怒涛の勤労生活に奮闘しつつ、ひとたび日本を脱出すれば幼な子を小脇に気ままな放浪人。 1990年代に世界を一周したバックパッカー。

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